探偵はもう、死んでいる。だけどその遺志は、決して死なない。
みなさんこんにちは。上空一万メートルでの出会いの前、本当の意味で原点と言える「探偵はもう、死んでいる。6」です!
過去編とは言え、シエスタと君塚のラブコメが見られるわけではない(ない?)本作。読む前は新展開の前の息抜きかな〜くらいの気持ちでした。
それがまあ、読んでみると。これは「たんもし」だわ、と思いましたね。何度も驚きや興奮があり、書かれている言葉にもめちゃくちゃ感動できます。
そんなわけなので、まだ読んでいない人はネタバレ注意かもです。
あくまで過去の出来事なので、そこまで気にしなくても大丈夫かもですが…。それでは行きましょう!
新たな登場人物《師匠》ダニー・ブライアント
回想はまだ君塚が小学生だった頃、彼の元に怪人物ダニー・ブライアントがやって来たところから始まります。彼は君塚をとあるアパートに連れて行き、そこに住まわせます。これが、どうやら今も君塚が住んでいる例のアパートのようです。
そして視点はシエスタに切り替わり、シエスタは連邦政府からダニー・ブライアントの捜索を依頼されます。既に《名探偵》になった後の話です。どうやらスパイ容疑がかけられているようですが…。
変装したシエスタとの出会い
ダニーを追って日本にやって来たシエスタ。なんと警察官に変装して潜入します。風靡さんも登場し、5巻までの流れを思い出しますね。
君塚の巻き込まれ体質によって事件が起こり、シエスタは「白金月華」として君塚と出会います。ちょっとここからは月華=シエスタと思ってください。
そしてその事件に関わりつつもダニーについて探る月華。月華と君塚双方の視点から交互に物語は語られます。
章タイトルには二人の名前と日付まで付いていますね。君塚の誕生日直前のようです。
月華の視点で事件の解決が描かれ(サブエピソードですが、この時点で既にびっくりしました)、アパートに帰って来た君塚はダニーと話します。あれ、普通に家におるやん。よく風靡さんとかに捕まらないな。
厄介なことになっていると言うダニーは、またしばらく出て行くようです。そりゃ月華とかに追われてるもんね…。
ダニー・ブライアントを追って
警察や探偵と戦うには、詐欺師や怪盗になるしかないと言い残していったダニー。君塚はその後、月華と行動を共にしていなくなったダニーを追います。
え、追うの?裏切り?なに?
手がかりはダニーがアパートに残していった絵。これを辿って北陸の児童養護施設に行きます。どうやらダニーはここで父親代わりをやっていたようですが…。
そんな中、君塚の視点になった時はダニーと連絡を取る場面も。合流は20時間後だ、と言っていますね。月華は君塚が何かを隠していることに気付いた様子だったが、このことでしょうか?
ここからはちょっと驚きの展開となります。まあミステリーを読み慣れている人にとっては珍しくもないかもですが、一応ネタバレ注意です。
ダニー・ブライアントの真相
施設内で、月華は君塚に改めてダニーのことを聞きます。
すると、、「ダニー・ブライアントは—— 一年前に死んでいる。」
すっごいわこれ。章ごとに日付がありますが、君塚と月華でちょうど一年間のずれがあったとは。確かに違和感は色々とありましたが…。君塚が月華を騙し切っている可能性もあるかもと思っていました。
今回のストーリーは非常にミステリーっぽいですね。君塚は、月華がダニーの死の真相を知っているのではないかと考え協力していたようです。ダニー・ブライアントはもう、死んでいる。
世界の敵は至るところに。
そして東京(?)に戻った君塚は、施設内にある金庫の鍵らしきものを見つけます。そこに画商の女の人、マローネから電話が。ペラペラと事情を話す君塚ですが、もう嫌な予感しかしないですね。
今度は予想通り、アパートの部屋を出たところで襲われてしまいます。施設内で目覚めた君塚。どうやら正義の味方を騙るマローネはシードの手先のようです。
正義の味方じゃないどころか、世界の敵じゃねえか!
ここからは一気に物語は終幕へと向かいます。
結局金庫は月華がマスターキーによって開け、さらにマスケット銃の試作品が登場!悪は成敗されました。
探偵はもう、死んでいる。だけど。
そしてダニー・ブライアントの正体は先代の≪名探偵≫だったようです。マスターキーは代々の名探偵に継がれる物だったのね。
ダニー・ブライアントは≪師匠≫の調律者なのかと思ってましたわ
君塚に人生を説き、多分大きな影響を与えた(かもしれない)人物でしたね。
そもそも君塚に近付いたのも≪特異点≫を保護するためだったと考察するシエスタ。未来を予見していたのか?と思うほどの頭脳は、シエスタに受け継がれてますな。
そんなダニーに思いを馳せ、シエスタは「探偵はもう 、死んでいる。だけどその遺志は、決して死なない」と考えます。これぞたんもし!
お客様の中に、探偵の方はいらっしゃいませんか?
最後は上空一万メートル、「お客様の中に、探偵の方はいらっしゃいませんか?」の直前の場面となります。君塚は隣の席のことなど全く気にかけていませんでしたが、シエスタの胸中はこんな感じだったのかと思いますね。
そして何より、最後の挿絵→表紙を開いたところの絵→表紙の順に目が開いていて、「お客様の中に…」に応える場面なのかな?と思わせてくれます。
すげーいい演出ですねこれは。ここから二人の目も眩むような物語が始まったのか…と感慨深くなるはずです!
たんもしらしい書き方や展開、かなりのミステリー要素もありました。シエスタがシエスタとして出てこない過去編と言うことであまり期待していませんでしたが、見事に予想を遥かに超える面白さでした!
そして個人的に感動したのは君塚のラストシーン。現在の仲間たちと話している場面で、夏凪について「鼓動を鳴らし、今ここで生きてる」という言葉が出て来たところですね。
こういう演出めっちゃ好き。
また、単なる過去編ではなく今後へ繋がる話も多かった印象です。次回から新展開となるはずなので、今度は非常に期待できますね!